重説時のインスペクション 保険検査の概要と同程度 有効期間は実施から1年内 国交省
住宅新報 2016年11月22日号
不動産取引の重説時に説明するインスペクションの概要は、インスペクターが作成する報告書の中の「検査結果の概要」と同程度の内容のものとする――。改正宅地建物取引業法の施行に向けた審議が行われ、その中で前記の文言を含む、いくつかの指針が打ち出された。
11月7日に行われた第28回社会資本整備審議会産業分科会不動産部会で、部会長は、東京大学大学院法学政治学研究科の中田裕康教授。
現在行われているインスペクション、つまり既存の住宅売買瑕疵保険の検査は、国の「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を踏まえて実施されている。検査結果としてインスペクターは報告書を作成するが、宅建業者が行う重説では、この中に明記された「検査結果の概要」と同内容のものを用いるとされた。
大地震が発生した後も検査結果はそのまま有効
ほかにも、重説時のインスペクションは「調査実施から1年以内のもの」とする。また、有効期間内のインスペクションが複数ある場合(たとえば売主・買主の双方がインスペクションを行った場合など)には、直近のものを対象とする。
ただし、その調査内容が異なる場合には、宅建業者の判断により、直近以外を用いての説明も可となる。
インスペクション実施後1年以内に大地震が発生した場合にも、建物の状態が実施時点と異なる可能性があるが、重説時説明の対象になる。
また、重説時に保存状況を説明する書類としては、検査済証、建築確認済証と確認申請時の図面等、新築時以降に行われた調査点検に関する書類として建物状況調査結果報告書、既存住宅性能評価書、定期調査報告書、新耐震基準への適合性を証明する書類として耐震基準適合証明書、固定資産税減額証明書、耐震診断の結果報告書、住宅耐震改修証明書などが挙げられた。
また、インスペクションに関する重説は売買取引の際だけではなく、内容にいくらか変更が加わる形で賃貸の際にも行われるとされた。
検討すべき多様な課題
このほかにも部会では、様々な議論が頻出した。
例えば、インスペクションを施したにもかかわらず、実際の取引までには至らなかった場合、その調査結果は何らかの形で、住宅データとして保存されうるのかといった問題も言及された。
また、消費者がインスペクションの重説に際し、更に細かな説明を求めた場合には、重説時にはインスペクターは同席せずとも、重説を担当する宅建士はインスペクターへの取り次ぎを請け負う。もしくは不動産業者関連からは、消費者には通じにくい事柄に関しては、専門的かつ分かりやすく簡単な回答例を行政側に作成してもらいたいという要望も聞かれた。
更に、既存の概要と、今回国交省が「イメージ」として作成提出した重説時の結果概要には、内容的にずれがあるという指摘もなされた。
マンションの共用部分についても既存の住宅売買瑕疵保険では必須とされるものが、ガイドラインではオプションとされている点にも、疑問の声が上がった。
大地震が起こった場合についても、それで建物が半壊状態となっても、地震発生以前のインスペクションを可とすることは、どうしても無理がある、という意見も出た。
こうした課題に、更に検討を加える中で、次回の部会は12月26日に開かれる。そこで取りまとめが行われる予定だ。